1. ホーム
  2. 2017年6月
  3. ディズニーの清掃と感動のキャッチボール

ディズニーの清掃と感動のキャッチボール

トイレ清掃のエポック・メーキング

 1983(昭和58)年は日本においてトイレの清掃(=清潔)が大きく変わったエポック・メーキングの年だったと思います。それまで日本においてはトイレというと「汚い・臭い・暗い」という否定的な印象でしたが、同年に東京ディズニーランドがオープンしてからは「きれい・清潔・明るい」といった肯定的な印象に変わりました。
 そのような従来からの印象を変える一助を東京ディズニーランドが果たしたことは、大いに誇るべき事実でした。それ以降、サービス業をはじめとして各業界がわれもわれもとトイレ改革を標榜し、いまではどこが一番きれいかと判断できないほどあらゆる業界でトイレがきれいになりました。
 トイレに関する話題や商品も多岐にわたり、なかにはトイレで昼食をとるといった強者もいるようです。また、仕事で叱られてトイレで一人悔し涙を流したり、失恋してトイレで泣いたりと、いろいろなケースでトイレを使う人が増えた今日このごろですが、それほどトイレは清潔で居心地のいい場所になったわけです。

「ハイ! ジャック」

 いまから60年前、私は新潟の片田舎で少年時代を過ごしていました。当時の私の清掃の思い出といえば、兄とともに朝の日課として自宅の狭い廊下の雑巾がけをしたり、秋に小さな裏庭の枯葉を掃除したぐらいの印象しかありません。
 ディズニーランドがオープンして5年目の1988年だったと記憶していますが、朝日新聞の天声人語欄に「ハイ! ジャック」という記事が載りました。
 そこに書かれていたのは、夜のトイレの清掃を担当していたカストーディアルキャスト(清掃員)が一人で仕事をする怖さと仕事にメリハリをつけるという意味で、それぞれの便器にジャックやビル、スミスといった名前を付けて「ハイ! ジャック、今日は随分と汚されたね。これから僕が君をきれいにしてやるね」と声をかけて清掃し、終わった後便器に頬擦りをして「OK、これできれいになったね」と言いながら仕事をしたというような内容でした。
 自分の仕事に対する自負と達成感、満足感が込められていて、この記事には当時ディズニーで働いていた私もいたく感動した記憶があります。
 1988年、人事部で採用担当をしていた時分、私は一年中採用に追いかけられていました。特にカストーディアルキャストはなかなか希望者がなく、欠員を埋めるのが大変でした。時代が変わり、2000年ごろになると、なんとカストーディアルキャストが一番先に埋まるという珍現象が発生し、いまでも一番先に採用が埋まっているそうです。
 いまのカストーディアルはローラースケートを履いて清掃したり、水を含んだモップでミッキーの顔を描いたりしています。清潔な真っ白いコスチュームに身を包んで清掃しながらゲストを楽しませるパフォーマンスを行うこの仕事に、志望者が殺到しているのです。
 ディズニーのオープン当初、一番難しかった清掃のキャストが今日そのような人気職種となり、清掃の仕事はプライドがくすぐられ、自尊心が高められる仕事に変身しました。まさに時代は変遷します。

ここから先は「ビルクリーニングオンライン」の会員の方のみ、ご利用いただけます。
ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。
登録(無料)やログイン方法は下記リンクをご覧ください。

雑誌イメージ

雑誌で読む場合は年間購読プランにご登録ください

業界唯一のビル清掃専門誌「ビルクリーニング」を、毎月ご登録の会社・ご自宅 へお届け致します。

ビルメンブックセンターで購入する

年間購読プランに申し込む

PAGETOPへ