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2012.09.25

病院清掃と感染対策

安全作業のためのスタッフ教育を考える

日時 2012年9月25日(火)13:00 ~ 17:30
※12:30 より受付開始
会場 大塚商会本社ビル302 セミナー会場
(東京都千代田区・JR 水道橋駅、飯田橋駅より徒歩6分)
参加費 購読者…無料
非購読者…7,500円
定員 100名(1社5名様まで)

病院清掃の重要な目的の一つは、感染防止にあります。感染防止を踏まえた作業を行うには、汚染度のレベルに応じた作業、資機材の使い分け、手指消毒の徹底、ガウンテクニック、廃棄物の適正処理などが必要です。また清掃作業のためには一般のビル以上に教育も重要となります。最近では針刺し事故の問題も指摘されており、感染防止という観点に立って、病院清掃における教育について考えたいと思います。

13:00 第1講座 「患者の視点から見た病院清掃のあり方」
医療福祉環境アドバイザー1級 (株)プラナ代表取締役 松本忠男
感染対策の基本はほこりのコントロール。そして病院において最大の弱者である患者の目線に立った清掃のあり方が不可欠です。これまでの決まりごとに縛られず、作業者が正しく理解し行動できるためのポイントを解説します。
14:30 第2講座 「安全な作業に必要な従事者への教育」
田園調布学園大学 協力研究員 (株)東栄部品代表取締役 足立友秀
病院清掃の現場において、どのようにスタッフ教育を実施すればよいか、海外での実例を紹介しながら具体的に伝授。基礎中の基礎が身につく24の質問で、エビデンス(根拠)を理解し、情報を知識に変えましょう。
16:00 第3講座 「『針刺し・切創防止マニュアル』活用のすすめ」
公益社団法人全国ビルメンテナンス協会 下平智子
全国ビルメンテナンス協会が刊行した『針刺し・切創防止マニュアル』の内容を解説します。
16:15 第4講座 「癒しのトイレ研究会 活動報告&マイクロファイバー使い方のポイント」
癒しのトイレ研究会/ディバーシー(株) 前川勤子
医療環境管理士/ディバーシー(株) 小島博
癒しのトイレ研究会とはどんなことをしている団体なのか。病院からは清掃に対してどんなリクエストがあって、ディバーシーはメーカーとしてそれにどう応えているのか。また明日からすぐに役立つマイクロファイバーの活用法についてご紹介します。

セミナーリポート

現場力を高めるための 3つの見える化患者の視点から見た病院清掃のあり方 より

医療福祉環境アドバイザー1級 (株)プラナ代表取締役 松本忠男

トイレには臭い、汚い、暗い、怖いの4Kがつきまとう

トイレを語ることによって、環境・教育・経済・健康・文化などそれぞれの問題が見えてきます。たとえば、子どもが小さいうちにトイレの行儀作法を教えることも教育の大切な部分です。
人間生活には衣食住の三要素が欠かせませんが、これと切っても切れないものが「排泄」になります。衣食住には好き嫌いがありますが、排泄やトイレのイメージは、臭い、汚い、暗い、怖いの4K が常につきまとっていますので、これを好きな人は誰一人としていないでしょう。極めてわかりやすい問題ですので、それを管理し、見違えるようにするのが、弊社の腕の見せどころであります。

院内感染はなぜ起こる?初めはほんのささいなこと

みなさん、モップの柄から風邪はうつるか、想像してみてください。正解はうつります。私は緊張すると鼻をこする癖がありますが、汚れたモップを手で触った後に鼻の粘膜や目を触ることで感染の可能性は高くなります。例えば内科外来の診察室の入口にかかっているカーテンをイメージしてみましょう。咳込んでいる人が看護師に声をかけられ、風邪のウイルスが付着した手でカーテンを開けて入っていく。次に来た人もまたカーテンを開けて入っていく......。院内感染の最初の原因は、その程度のことなんです。些細なことがどんどん広がって取り返しのつかないことになってしまう。そうなる前に、お掃除をされている方が現場で「こういうことが起こるだろう」と想定し、事前にカットしていけば、感染する菌の広がりを抑えることができます。病院清掃というのは原因が小さいうちに汚れ、ほこり、菌、ウイルスを取り除いていく仕事であるわけです。
マニュアルというのは一つの基準として重要ですが、院内感染を防ぐのに一般論では頼りになりません。現場で働いている皆さんが現場で起こっていることを肌で感じて、観察して、対応していく必要があります。だから、今、あなたの目の前で起こっていることに注視していただきたいのです。

見えない菌やウイルスにどう対応していくのか

院内感染とは、いわば真っ暗な部屋にいるカラスのようなものです。みなさん事前に菌やウイルスについて勉強すると思いますが、実際に現場に出ると菌は見えません。どこがどうなっているかわからない、まさに真っ暗闇のなかでカラスを探し出すようなもの。知識があっても現場ではどう対応していいかわからず、また必ずしも正確に対応できるわけではないと思います。

ではどうしたらいいのか? 見えないのだから、いるだろうと想像するしかありません。目を閉じて、病室の風景を想像してみてください。
ここではイラストAを見ながら説明していきます。例えばエアコンはどこにあるのか、エアコンから出る空気は汚染されていないか、窓はどこにあるのか、窓は開いているか、開いていたら外はどうなっているのか、ベッドは高いのか、低いのかなど、それぞれの病室によって違いがあります。その違いを見て、「ここはこういう可能性があるだろう」と想像力を働かせ、見えないものを見ていきましょう。

ただ、みなさんもご承知のようにモップを使ったり、ウエスで拭いたりすることで、もしかしたら菌を逆に広げている可能性もあるわけです。細かいところですが、どういう道具を使っているのか、どう動かしているのか、その結果、病室がどうなっているのか、一つひとつ「想像」する術を身につけてください。実はそれが清掃による院内感染の原因を小さいうちに防ぐ大きな要素になるのです。

ところでイラストには大事なことが書かれていません。そう、患者様です。院内感染対策は患者様のためにあります。だから、菌とかウイルスから考えてはいけません。菌をどうするかという問題ではなく、患者様にとって心地よい治療環境をつくるための院内感染対策であり、病院清掃なのです。
イラストの中心には必ず個々の病室にどういう患者様がいらっしゃるのかを想像してください。どのくらいの期間入院されているのか。年齢や性別によっても状況は違ってくるでしょう。毎日清掃に入るわけですから材料は山のようにあるはずです。そういった情報を見つけていく癖をつければもっといい仕事ができるようになると思います。

ほこりを見える化して現場力を高める

目で見えないものは想像することも、ましてや改善することも難しいと思います。想像力を高めるには、徹底した「見える化」が不可欠です。そのなかで特に下の3つのことが重要になってきます。

(1)「 ほこり」の見える化
(2)「 菌」の見える化
(3)「 清掃スタッフの行動」の見える化

一つ目は「ほこり」の見える化です。病院の清掃は昔からほこりを舞い上げてはいけません、ほこりを除去しなければなりませんと言われ続けていますが、実際にどのくらいほこりがあって、どう影響するかは意外と語られてきていません。  ほこりとは日々の暮らしで発生する繊維くずやダニ、あるいは外から飛んできた粉塵や花粉など極めて軽い物質の集合体です。特殊なライトを当て、超高感度カメラなどで撮影するとわかりますが、目には見えなくても常にあなたの身のまわりにたくさん浮遊しています。そしてカーペットを歩くだけ、コートを脱いだりするだけでも大量のほこりが舞い上がります。目に見えないだけに不気味と感じてしまいますが、ほこりは当然あるものなので、それをゼロにはできませんし、あるからどうというものではありません。しかし、病院の場合にはここに感染を起こす菌やウイルスがくっついて空中をただよっています。健康な方には問題なくても、抵抗力が落ちている患者様は感染してしまう可能性があるわけです。みなさんが行うのはこれを可能な限り何とかしていかなければならない重要な仕事なんです!  最初のイラストで一番問題がある場所をご存じでしょうか?そう「寝具」です。人間は寝ている間にだいたいコップ1杯分の水分を出しますが、その水分がどこにいくのかというと、寝具にしか行きようがありません。そこに毎日毎日吸収されていく。菌は湿った環境が大好きで、当然病院ですから患者様からなんらかの菌が出ている可能性もあります。そして布団をはたいたりすると菌やウイルスだけでなくカビの胞子やダニがついたほこりがバンバン出てくるわけです。もちろんそのすべてに感染するわけではありませんが、リスクが高くなることは間違いないのでベッドまわりのお掃除が重要であることを頭に入れておいてください。

菌を見える化して現場力を高める

次は「菌」の見える化です。実際にバクテリアサンプリングを行った結果を見ながら説明していきましょう。細菌、カビ、ダニなど、最近では簡易検査が増えてきました。ちょっと拭き取って試薬をかけ、30 分後くらいに色が変わってくるというものです。その色の程度によって、ざっくりとですがどんな菌やカビがどのくらいいるのか見ることができます。たいてい白から薄い青であれば問題ない量で、そこから濃い青に、最後は赤紫に変わっていきます。

先ほど問題があると言った寝具関係ですが、まくら、シーツ、タオルケットなどを見てみると、特にシーツが赤紫になっています。常に体が接しているシーツは汗を一番吸収するため菌やカビが繁殖しやすい環境になりやすいのです。まくらは薄い紫ですが、髪の毛には常在菌(普段は健康に影響を与えないが免疫力が低下すると日和見感染を起こすことがある)がかなりいるのでまくらカバーにも要注意です。タオルケットも薄い紫でしたが毛布や布団は敷き直したり、寝たり起きたりするだけでほこりが舞い上がることが問題です。
待合室のイスはとくに問題ありませんでした。

次に浴室の壁ですが、カビが多いという結果が出ています。ただ目視ではカビはありませんでした。浴室の場合、見えないからと言って、カビの胞子がないわけではありません。「カビのあるところだけ除去すればいい」ではなく、カビの見えない床、壁にも必ずカビの胞子はあると想像してください。
それと浴槽の水ですね。清掃後に水をはり、誰も入っていない状態の水ですが、紫色になっています。清掃が行き届いていないのか、それとも他に理由があるのか定かではありませんが、あなたの現場もこうなっている可能性があるという一つの例です。

行動を見える化して現場力を高める

最後に清掃スタッフの行動の見える化ですが、最近はインスペクションという言葉がよく使われるようになりました。ただ、本当の院内感染対策、病院をきれいにしていくというのは点数をつけたり、評価をしていくことがゴールでは絶対にありません。評価をしたあとに現場で働いているみなさんが望むとおりの改善をしなければなりません。
例えばチェックリストで3段階や5段階の評価をしたとします。それは今後どう生かされ、現場はどうなっていくのでしょうか。紙のデータが膨大に集まったとして、それを全部めくって分析するのは難しいですよね。そこでパソコンに入力すると自動的に分析してグラフ化できる「適在適掃アプリ」というものを開発しました(詳細はhttp://www.seisouzin.com/ でご確認ください)。

重要なのは汚れをチェックすることではなく、その理由をチェックすることです。なぜ汚れているのか、汚れにもいろいろな原因があります。サボって汚れていることもありますし、どんなに清掃しても汚れる頻度のほうが大きい場合もありますし、作業がしづらくて放置されていたり、汚れの落とし方がわからないなんてこともあると思います。その理由をチェックして、それに対してどういう指示をして、どうなったのかという履歴を残さないと、現場でいくら努力してもいきあたりばったりになってしまいます。現状を知るだけでなく、一年前はどうだったのか、半年後はどうなのかをデータとして見ていく必要があるんです。私は長年、現場を管理する立場にいましたが、うまくいかない原因はたいていここにありました。

理由は何なのか、改善をどうしたのか、それからいつどうなっていくのか、履歴を見せ合ってみんなが理解することは現場力を高めるうえでも、院内感染対策をしていくうえでも重要です。
そして、みなさんが担当している施設内の汚れや感染がどんな状況にあるのか、清掃スタッフがどういった作業をして、何を改善し、どう成長してきたのかの履歴を見える化することは、病院側と現状を共有し、解決していく手助けにもなると思います。
「正しい感染防止策」「病院や患者様に感謝される清掃」「他社との違い、独自化づくり」「価格競争からの脱却」「病院清掃のお仕事を増やす」......。これらはすべて「現場力」を高め、 高めた「現場力」を伝えることからしかはじまらないのです。

セミナーリポート

患者、作業者を守るため "してはならない"こと安全な作業に必要な従事者への教育 より

田園調布学園大学 協力研究員 (株)東栄部品代表取締役 足立友秀

ポジティブインスペクションで"励ますように"教育する

私からはスタッフの教育についてお話しします。

みなさんは、自分のお子さんに「あれをやりなさい。これをやりなさい」と、やるべきことを教えていませんか? 病院清掃においては、「すべきこと」よりも「してはならないこと」を教えることが重要です。こういうことをすると、「失敗しますよ」「あなたが感染してしまいますよ」「患者に嫌われますよ」ということを、まず教えるわけです。なぜなら、病院には「絶対にしてはならないこと」がたくさんあるからです。

清掃スタッフには失敗してほしくないですし、信頼される仕事をしてもらわなければなりません。そのためにも、まずは「してはならないこと」を理解し、それを仕事のなかに生かすことが重要です。
クレームを起こさないために、みなさんの現場でもインスペクション(調査・検査)を行っているのではないでしょうか。

インスペクションには「ネガティブインスペクション」と「ポジティブインスペクション」があるのをご存じでしょうか。ネガティブインスペクションは、点数で人を評価するだけで、元気づけることはありません。しかも、人がいないところで調べます。対してポジティブインスペクションは、評価してほめるようにします。「上手になりましたね。何で汚れが取れるんですか? 教えてくれませんか?」というように、コミュニケーションを重視します。

このように、ただ調べるのではなくて、ポジティブインスペクションで励ますように調べていただきたいと思います。

患者の回復を妨げないため"してはならない"こと

それでは、ここから病院清掃において「してはならない」ことをお話します。これらは、老人ホームにも、保育園にも共通するものとお考えください。

患者を起こしてはならない

私たちが病院で働くなかで、いちばんしてはならないのは、患者を起こすことです。

患者にとって大事なものは睡眠です。睡眠をとらなければ病気は良くなりません。健康な人は十分眠ればパッと起きられますが、患者は十分な睡眠をとればさらに良く眠ろうとします。良い睡眠をとることが、早く退院することにつながるのです。

ところが、掃除機で音を立てる、廊下では送風機を回して剥離作業をする、部屋では自在ぼうきでほこりをたてる。場合によっては、大きな声で「こんにちは!」とあいさつして患者を起こしてしまうと、回復を遅らせることにもなりかねません。
つまり「作業のマナー」という問題だけにとどまらず、眠りを妨げることが患者の回復に影響することを、しっかり教育するべきです。

汚れた空気を作ってはならない

せっかく治りかけている病気を悪くするのが汚れた空気です。そのため、患者がいるところでほこりをたててはいけません。例えば自在ぼうきで掃く行為はどうでしょう。ほこりをたてずに作業することはできますか? 今、アメリカでいちばん新しいやり方は、ウエットのマイクロファイバーのフラットモップで拭くことです。1回で終わりますし、ほこりをたてません。

また、ウールダスターにはディスポ(使い捨て)カバーを付けるべきです。化繊のものも同じです。
表面をマイクロファイバーのカバーや、大き目のマイクロファイバーのクロスで包むのも有効です。でないと、かえって汚れをひろげることになります。
綿でできたリネンカートも要注意です。中に、ほうき、ちりとり、かっぱきなどを入れたり、時々ゴミを入れたり、リネンを入れたりするうちにカート自体が汚れてしまい、移動しながらほこりや汚れを撒き散らすことになります。

有機物を残留させてはならない

水も、お茶も、血液も、フケも、カビもみんな有機物ですね。こうした有機物、つまり汚れをとるのが私たちの仕事です。ですから、汚れを残してはいけないし、残るような道具を使ってはいけません。

アメリカのデータですが、綿の雑巾で拭いても汚れは65%しか取れません。マイクロファイバークロスになると95%は取れます。つまり、マイクロファイバーのほうが病院清掃により適していると言えます。ただし、目に見える汚れはなくなっても、すぐに腐敗して、細胞分裂するくらいの汚れはたくさん残っていることも忘れてはいけません。

血液を吸い取るのに紙を使います。しかし、目に見える赤血球は除去できても、目に見えない血小板や白血球、血液の中に含まれる脂は残っています。

では、洗浄する場合はどうでしょうか。洗浄力を100 とすると、水道水は10 しかありません。アルコールも10 です。次亜塩素酸水や超純水は7~8です。つまり、水でもアルコールでも、次亜塩素酸水でも汚れは完全には取れません。ただし、強酸性水、アルカリ性水には洗浄力があります。

汚れを拡散・拡大してはならない

私たちの掃除で、汚れを一番広げているのは綿モップです。先ほど言ったように、綿の雑巾では汚れが65%しか取れません。同じように、綿モップを使うと多くの汚れが残り、状況によっては床が寒天培地のようになってしまいます。

また、スポンジも病院では不適切な用具です。みなさんの業務ではありませんが、尿しびん瓶を洗うために看護助手や看護士の方が使っていますね。しかし、スポンジの中に便が入ったら、どんなに洗っても取れません。たわし、歯ブラシも、同じ理由から病院で使ってはならない道具です。

交差汚染(クロスコンタミネーション)は絶対タブー

交差汚染のことを英語で、クロスコンタミネーションと言います。

このような交差感染や、汚染の拡大の原因として、掃除用手袋に注意しなければいけません。ピンク色とか緑色の、便器を掃除するときなどに使うものですね。これが、アメリカの病院では現在使用禁止になっています。
強度があるので、同じ手袋で次から次にドアノブを拭くとします。すると、そこからMRSAやノロウイルスなどが拡大します。掃除用手袋で自分の命は守れても、感染を拡大させてしまっては患者の命は守れません。これは、ぜひやめるべきです。

しかし、黙ってやめるのではなく、病院側にアプローチしてみてください。「こういう理由でやめます」「これからは相談させていただけませんか」「これからはディスポグローブ(使い捨ての手袋)に替えたいと思います」というふうに、コミュニケーションを図るきっかけにします。自分たちの疑問や課題を、病院側と一緒に解決していくようにしてください。

汚れを露見させてはならない

みなさんのカートには、モップや自在ぼうきが逆さまに付いていませんか? 患者の目の前を、ほこりの付いたモップが、自在ぼうきが、ウールダスターがスーッと通りすぎていくとしたらどうですか?気持ちがいいものではありませんね。これは、上下を反対にすればいいだけの話です。
それから使用済みのものは、カートの一番上に置いてはいけません。いろいろなカートがありますが、一番上は今から使うもの......ケミカル、クロス、手袋などを置きます。真ん中には、ガウン、ゴーグルなどですね。使用済みのクロスなどは一番下に置くべきです。

時間がかかってはならない

床の掃き掃除、拭き掃除に時間をかけてはいけません。ベッドの下のゴミをかき出すのに、時間がかかっていませんか。私は、知的障害者の人たちに作業を教えていますが、マイクロファイバー製の長刀状の道具を使えば3秒で作業完了です。

みなさんは器用ですから、自在ぼうきやドライモップで、ベッドの下も、いすの下も、広いところも、同じ道具でできますね。しかし、それでは時間がかってしまいます。道具を変えたほうが、はるかに早く、正確に取れますので、ベッドの下は、拭き掃除はほとんどいらなくなります。
1人で4人部屋を10 部屋やるとしたら、40 ベッドあります。専用の道具を使えば、1ベッドあたり30 秒速くなり、1日では20 分速くなる。20 人が働いていれば400 分(7時間)です。休憩時間を入れると、1人ぶんの人件費が浮くことになります。

危険なもの(VOC)を使ってはならない

VOCというのは揮発性有機化合物ですね。

清掃の現場で、揮発性の高いアルコールを使うことがあると思いますが、これは清掃に使っていいのでしょうか?
ある病院で、MRSAの患者さんが亡くなった後の部屋を、ガウンを着た数名の清掃スタッフがアルコールの染み込んだウエットティッシュで一生懸命拭いていました。しかし、廊下まで揮発したアルコールの臭いが漂い、ライターを点けたら部屋が燃えるのではと心配になるほどでした。危険性を考えると、アルコールを使うべきではありません。
もうひとつ、アルコールは血液を凝固させます。アルコールで机を拭いたりすることは、決してしてはいけません。血液、たんぱくを凝固させるので、かえって残ってしまいます。

半分は患者さんのため 半分は自分の身を守るため

ほかにも、「臭わせてはならない」「不信な道具、不信な動きで不安がらせてはならない」など、”してはならない”ことはたくさんあります。

しかし、共通しているのは「ほこりをたてないようにする」「接触感染をしないようにする」などの目的のためであり、半分は患者さんのため、半分は自分の身を守るために必要なことばかりです。そして、これらを実行することは、同時に「病院に対する配慮が足りているな」という評価にもつながるものです。

ぜひ、みなさんの現場でも、一度見直してみてください。

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