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ATP検査による科学的清掃管理へ

私たちが対象とする建築仕上げ材や設備機器などは、建築物を利用する人の生活や生産活動などによって、必然的に汚れてきます。汚れは、清掃作業を行うことによって除去され、きれいさを取り戻します。

例えば塩ビ系床材では、樹脂ワックスを塗布したり、バフによって磨いたりして、光沢を上げ(輝かせて)、きれいさが見た目で実感できましたし、光沢値を計測することで、その状態を管理することもできました。

いままでは、清掃作業を行うことで、あるいは除菌効果のある洗剤を利用することで、同時に清潔さも担保されていると、だれもが思っていたのではないでしょうか。少なくとも、それで問題は起きませんでした。

ところが2020年、新型コロナウイルスが全世界に流行したことで、その考え方が一変しました。すなわち、目に見えないウイルスがどこからやってきて、どこに付着して、どうやったら除去できるのか。しかも適切に除去できているかもわからない。ひょっとしたら、清掃作業中に作業者がウイルスに罹患してしまうかもしれない。そんな恐怖と戦いながら、定められた方法で清掃業務をする状況を余儀なくされました。

いまや、「清潔=ウイルス感染リスクの低減」、つまりウイルスの存在・除去を確認することができないと、安全を確保できなくなったのです。

そのようなニーズの高まりから、私たちビルメンテナンスに携わる者にとって、「清掃の見える化」が真剣に検討されはじめた最初の年になりました。

その点で、いま最も注目されているのが、ATP検査を用いた科学的清掃管理でしょう。

従来の取組

これまでビルメンテナンスでは、下記のような計測方法を用いて数値化することで、清掃状態の良し悪しや、清掃頻度の目安を判断することに利用されてきました。

しかし、いずれも適・不適があり、清掃によって菌やウイルスからの感染リスクをどの程度下げられているか、現場で迅速に調べることはできませんでした。

ATP検査を使った取り組み

これに対してATP検査法は、1990年代後半から「汚れを簡易・迅速に測る検査」として厨房や食品工場の衛生管理に活用されはじめ、現在ATP・迅速検査研究会において調査・研究が行われています。清掃分野においても、1990年代後半から学術研究でたびたび利用されるようになり、医療機関や保健所などで利用されてきたものの、一般ビルメンテナンスの清掃(清浄度)評価としては、それほど普及していませんでした。

本誌2020年12月号にて、ATP検査を活用して「清掃の見える化」を実現したイオンデライト株式会社の「ニュースタンダードクリーニング」を紹介しました。そのなかで、同社は清掃直後にATP検査を実施し、一定の水準に満たない場合は作業方法の見直しや教育で改善を図るとしています。

次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸水、アルコールなどでは、汚れが除去されていないと消毒の効果が得られないことが多いので、そのための清浄度レベルチェックとしてATP検査は有効と言えるでしょう。

今後の期待

ATP検査は、目に見えない汚れ(有機物+微生物)の汚染度を、だれもが簡単に10秒程度の時間で数値化できる優れた方法と言えます。この手法を活用することにより、清掃作業品質の見える化、すなわち「清掃の見える化」を実現することができます。そうすることによって、目に見えない細菌やウイルスによる感染リスクも、できるだけ低減できるようになりますし、洗剤や清掃用具を見直し、清掃方法を改善し、最適化することが可能になります。

ビルメンテナンスにおいては、いままでの目視判断だけでは清掃の価値を十分には語れませんでした。したがって、清掃頻度で契約することが慣例化し、競争力が出せませんでした。しかし、これからは人の健康や生死にかかわる「感染リスク」低減を実現するのですから、多くの数値データを取得して日々品質改善する「科学的清掃」を実現すれば、オーナーに対して説得力を持って清掃費用を交渉できるようになることが期待されます。

清掃品質を見える化できることにより、サービスの価値が変化し、それによりオーナーは安心でき、信頼を獲得できます。建物を利用するお客様も安心して利用することができます。清掃作業者も安心して仕事ができるようになるはずです。

いまや、建物や店舗に入る際には、体温を計測し、アルコール消毒し、場合によってはマスク装着を確認されるなど、ウイルス感染対策のための「見える化」がすでに定着しつつあります。本特集のATP検査は一例であり、ほかにも空気質の管理(粉塵量、換気量、VOC量、臭気など)や、例えば抗菌施工後の抗菌レベルの保証など、さまざまな科学的手法を駆使して、「清掃の見える化」を実現することが、今後のビルメンテナンスに求められてくるのは必至であろうと思われます。

2021年2月号より

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