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新型コロナウイルスの影響と課題❶
外国人技能実習生の現在を追う

今年の3月号で、緊急特集と題し「新型コロナウイルスに備える」を取り上げ、以降、新型コロナウイルス感染症の関連トピックスを掲載してきた。さらに、前号ではビルメンテナンス業界の現状を把握すべく、アンケート結果の報告を行った。これからの特集は、「新型コロナウイルスの影響と課題」というシリーズとして、ビルメンテナンス企業の経営や現場マネジメントについて掘り下げていく。

シリーズの第1回目は、業界で活躍する〝外国人材〟についてである。
ビルクリーニングにおける外国人技能実習制度は、4年目を迎え、技能実習3号(最大5年間の就業が可能)、特定技能1号と外国人労働者の受け入れの間口は確実に広がっている。

そんな最中、想定外のコロナショックである。

外国人材のスキームを作った企業は、新しい人材の受け入れを一時ストップするしかなくなった。また、日本で働く外国人材は母国の状況や家族の近況を憂いながら、自らは外国の地である日本で過ごさなければならない。
この未曾有の危機に、企業はどう対処し、外国人材と向き合ってきたのか──。
ビルクリーニング外国人材受入支援センター協力のもと、同センターが実施した「コロナ禍における外国人材受入に関するアンケート調査」を公表させていただく。また、編集部では外国人材を受け入れている3社を取材し、アンケート調査とともにその実態を読み解いた。

外国人材受け入れ企業を訪ねて──
アンケート結果を裏付けるコロナ禍のビルメン企業の実態

協力:㈱コンフォール、日本環境マネジメント㈱、㈱トラストサービス text:編集部

コロナ禍における受け入れ企業の実態を知りたい

ビルクリーニング業の外国人技能実習生、特定技能者の受け入れは、始まってまだ日が浅い。初年度(2016年)と比べて受け入れ人数は右肩上がりであるものの、全体で1,681名にすぎない。とはいえ、深刻な人手不足のなか、受け入れ企業の大半が、外国人技能実習生たちの働きぶりを高く評価している。
本誌では、2016年12月号で「外国人技能実習生の受け入れとその課題」と題した特集を組んで以降、たびたび、ビルクリーニング業で活躍する外国人技能実習生にフォーカスしてきた。これまで、ベトナム、カンボジア、インドネシア、中国、フィリピン、ネパール、計6か国の外国人材を取材し、そのパーソナリティや受け入れ企業の実際に迫った。言葉の壁にぶつかり、文化の違いから想定外のことが起きたり、何もかも手探りの状態で始まる技能実習生の受け入れ。企業側は、一度作ったスキームや経験を活かしながら、着実に受け入れを増やしている。

思えば、取材した受け入れ企業では必ず、「半年後には○名が来日予定です」と次の予定が立っていた。おそらく、その背景には、1期生の存在が大きい。彼らがいるからこそ、2期生以降の人材を任せることができ、それが脈々と受け継がれている。それだけ、人手不足の解消に寄与し、企業にとって良い循環を起こしている。
だからこそ、今回の新型コロナウイルス感染症は、受け入れ企業にとって大きな影響が出ているのではないかと思った。次の人材が日本に来られない、帰国予定だった者が本国に帰れない。
受け入れ企業は、このコロナ禍でどのように対応し、外国人技能実習生たちを活用していたのか。今回、3社のビルメンテナンス企業を取材した。アンケート結果と照らし合わせながら、その実態を読み解いていく。

※アンケートの詳細は本誌に掲載

影響の大きいホテル業務
シフト調整に各社苦労

■ 取材先3社の受け入れ状況

今回取材した3社は、外国人技能実習生を10人以上受け入れている。長野県松本市のコンフォールは、ベトナムの技能実習生が30名、特定技能者が7名。埼玉県さいたま市の日本環境マネジメントは、フィリピンの技能実習生が10名。東京都江戸川区のトラストサービスは、ベトナムの技能実習生が30名となっている。3社で受け入れている外国人材は、いずれも女性である。

アンケート結果からもわかるように、問4「就業場所」では、ホテルの回答が多いが(61%)、コンフォールとトラストサービスも、ホテル清掃が中心であった。コロナ禍は、ホテルの休館が相次ぎ、従事している外国人技能実習生たちの1日の就労時間である8時間に満たず、休業を余儀なくされた。
日本環境マネジメントは、官公庁物件を中心に、オフィスビル、介護福祉施設、公共施設、スーパーマーケットなど、外国人技能実習生の現場は多岐にわたる。とはいえ、一部は休業、もしくは時短営業という兼ね合いから、従来のようにフルタイムでの勤務が叶わなかった。また、各施設で働く日本人パートを優先し、技能実習生はあらゆる現場を回ることで、会社全体の休業者が出ないよう取り計らったというが、以前のような働きかたには至っていない。

■ 作業時間の確保に苦戦

アンケートの問6「休業補償の有無」や問7「雇用調整助成金の申請」については、コンフォールはすでに雇用調整助成金を申請し、他の2社も申請する予定で動いている。各社、一部休業というかたちであるが、先にも触れた通り、1日8時間の労働が困難な状態である。

アンケート結果からもわかるように、問4「就業場所」では、ホテルの回答が多いが(61%)、コンフォールとトラストサービスも、ホテル清掃が中心であった。コロナ禍は、ホテルの休館が相次ぎ、従事している外国人技能実習生たちの1日の就労時間である8時間に満たず、休業を余儀なくされた。
こうした背景もあって、問13「経営上の問題」のなかで「シフト調整が難しい」に多くの意見が集中している(71%)。特に、日本環境マネジメントやトラストサービスのように、複数現場を組み合わせたシフトを組んでいるため、苦労は大きかったようだ。各現場で働く日本人パートの兼ね合いや協力会社との関係などもあり、外国人技能実習生をどの現場にあてがい、従事させていくのか、こうした作業シフトの組み替えは非常にシビアな問題である。

■ コロナ禍の外国人材たち

自宅待機者が増えたコンフォールの外国人材たちは、ステイホーム期間中、アパートの敷地内で空いているスペースを見つけ、雑草が生い茂った地を耕し、種を蒔き、水をやり、ベトナムの野菜を育てたという。少しでも食費を節約しようという、彼女たちの努力がうかがえる。

日本環境マネジメントの外国人技能実習生たちは、1日の就労が8時間から減少。他の現場を経験し、それでも空いた時間は本社で各現場に配布するマスクを詰めたり、ビルクリーニング技能検定の練習をこなしたりと、できることを実施していった。
トラストサービスの外国人技能実習生たちは、朝のオフィスビルの清掃を行い、その後、手持ち無沙汰の状態であった。ベトナムの技能実習生たちと同じホテルで責任者として働く日本人スタッフが、「マスクを作ろう」という号令のもと、本社で手作りの布製マスクを作った。ボランティア活動の一環として、布製マスクと除菌剤を地域の保育園や介護施設、社会福祉施設に寄付し、地域貢献に勤しんだ。

■ 今後の受け入れの見通し

アンケートの問15「今後の外国人材の受け入れ」については、コンフォールは、ベトナム人の技能実習生を新たに5名、9月に受け入れる予定。現在のところ、渡航の制限も解除された地域であることから、予定通りに入国できるとの見解を示した。
日本環境マネジメントについては、フィリピンから1名の外国人技能実習生を本来であれば6月から受け入れる予定だったが、これが止まってしまい、本国で待機状態となっている。
トラストサービスは、新たな人材を求めて5月にベトナムへ渡航する予定だったが、これが延期になっている。このあたりは、双方の国の状況を見つつ、新しい人材を迎え入れるか検討したいという。

3社のルポは、次号以降で詳しく掲載していく。

2020年8月号より

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